ドローン空撮発注ガイド
これからドローン空撮を頼みたいなぁという方向けにドローンパイロットが何をして何を考えた飛行の可否を決めているか、それによりどのように料金を考えて加算するかをガイドブックにしました。
打ち合わせや現場でのトラブル回避、またこれからドローンやりたいなという方の参考にもなると思います。
目次
- ドローンはどこでも飛ばせない
- 許可が必要な飛行の種類
- 許可承認と飛行マニュアル
- 第三者および第三者上空とは
- なぜドローン撮影は高額になるのか
- なぜ「今日飛んで」が難しいのか
- よくある勘違い10選
ドローンはどこでも飛ばせない
ドローンは「空を飛ぶカメラ」ではなく法律上は飛行機やヘリと同じ航空機の一種です。
そのため
・航空法(DID、夜間、目視外、人・物件30m未満飛行、150m以上、イベント上空など国の許可が必要になります)
・小型無人機等飛行禁止法(重要施設周辺での飛行を規制。2026年改正され7月頃より範囲が300m→1kmに拡大されます)
・道路交通法
・河川法
・自然公園法
・港則法
・文化財保護法
・個人情報保護法
・肖像権・プライバシー権
・都道府県条例
・市区町村条例
・公園管理規則
・施設管理者のルール
など複数の法律やルールを確認する必要があります。
「飛ばせる場所を探す」のではなく、「飛ばせる条件を整える」
ことがドローン撮影の大前提になります。
ご依頼いただいた場合、可能な限り飛びたい気持ちはどのパイロットもありますが条件を整えず、撮影して外部から指摘があった場合に映像作品そのものが違反の証拠となり非公開にせざるを得ないケースがあります。
例:香川県三豊市の国道11号開通紹介、大阪万博毎日放送、SNSでの指摘による企業PV非公開など
許可が必要な飛行の主な種類
航空法では、通常の飛行よりリスクが高い飛行について、国土交通省の許可・承認が必要になります。
代表的なものは次の5つです。
1. DID地区飛行(人口集中地区)
DID(人口集中地区)とは人口や建物が密集している市街地のことです。
東京都23区のほとんどをはじめ、多くの都市部が該当します。
2. 夜間飛行
日没後~日の出前の飛行
夜間は視認性が低下するため、リスクが大きくなります。
3. 目視外飛行
FPVやモニターを見る飛行、建物や木の裏側の飛行や操縦者が機体を直接見られない飛行。
4. 人・物件30m未満飛行
「物件」とは建物、車、電柱、樹木、看板などです
「人」とは撮影に関係していない第三者。
現実的には多くの場所ではほぼ必ず30m未満飛行になります。
5. イベント上空飛行
多数の人が集まる催しの上空。
対象:花火大会、マラソン、お祭り
・実務上はこの5つに加えて高度150m以上、空港周辺、危険物輸送、物件投下
などがあります。
大事なポイント
これらの許可・承認は「禁止飛行を安全対策を条件に認めてもらう制度」です
許可を持っているから飛べるのではなく飛行マニュアルに沿って運航する責任があるということになります。
「飛べるか」よりも「安全を確保しながら飛ばせるか」を考えることの方が重要になります。
許可承認(包括)と飛行マニュアルの関係性について
ドローンの許可承認は、「飛ばせる資格」ではなく、通常は禁止されている飛行(前章)を一定の条件(国交省が認めたマニュアル)のもとで実施するための制度です。
特に映像制作会社や広告代理店の担当者は、この部分を理解しているだけでパイロットとの意思疎通がかなりスムーズになります。
①許可と飛行マニュアルはセット
ドローンの許可・承認は「このような安全管理を行います」という飛行マニュアルを前提として許可・承認を出しています。
つまり許可+飛行マニュアルで初めて飛行が成立します。
例えばDID地区飛行の許可ありだから都心で飛べるではありません。
周囲確認、第三者管理、補助者配置、緊急着陸場所など飛行マニュアルに従った安全管理が前提になります。
②許可ありでも、マニュアルで×になることがある
例えばDI夜間目視外すべて取得済み
しかし現場が人通り(第三者)が多い、補助者なし、緊急着陸場所なしという状況なら飛行マニュアルに定められた安全管理を満たせません。
すると許可があり法律もOKでも飛行マニュアル違反の可能性があれば飛行中止となります。
飛行マニュアルは実際の現場で守るべき運航基準です。
例えば飛行経路下に第三者が存在しないこと、必要に応じて補助者を配置することなどが定められています。
飛行マニュアルに基づいて「安全に飛ばせる条件をどう整えていくか」という視点で発注、相談することで当日に飛行NGという事故が起きにくくなりますのでかなり仕事がしやすくなると思います。
③許可承認を全部取っている=全部同時にできるではない
例えば
DID+夜間 原則行えない
DID+目視外 原則行わない。業務上やむを得ない場合は補助者や立入管理など追加措置が必要。
夜間+目視外 原則行えない。
など組み合わせにより許可があってもNGになる環境も存在します。
第三者および第三者上空とは?
現在の日本では航空法に基づいた許可承認と飛行マニュアルの関係上、第三者上空飛行は現状ほぼ不可能です。
そのため
「歩行者の頭上を飛びながら撮影する」
「道路を走る車の真上を飛ぶ」
「観光客の上を通過する」
といった飛行は、通常は行えません。
(U99マイクロFPVを使うなど対策はありますが万能ではありません)
第三者とは「飛行に関係する人以外」を指します。
関係者:パイロット、補助者、クライアント関係者、被写体など飛行を知っている人
第三者:歩行者、公園利用者、近隣住民、車の運転手、自転車利用者など飛行を知らない人(関係者の関係者でも飛行していることを知らないと第三者)
第三者上空とは
第三者の頭上及び落下予測範囲に第三者がいる飛行を指します。
よって都市部では「飛ばすこと」よりも「第三者上空にならないよう管理すること」
の方が難しい場合があります。
「ドローンパイロットは、飛びたい場所を飛んでいるのではなく、第三者を避けながら飛べるルートを探している」感覚です。
なぜドローン撮影は高額になるのか
ドローン撮影の費用は「何分飛んだか」ではなく「どれだけ安全に飛ばすことが難しいか」によって決まります。
1. 操縦技術が必要
ドローンは誰でも「安全に」飛ばせる機械ではありません。
操縦者には
機体特性の理解、気象判断、緊急時対応、フェールセーフの理解、カメラワーク、現場判断
などが求められます。
特に人や物近接撮影、夜間、FPV、都市部などでは特に高い操縦技術が必要になります。
2. 第三者のコントロール
前章の通りドローンの仕事で最も重要なのは「第三者を巻き込まないこと」です。
現場では歩行者、車両、近隣住民などを考慮しなければなりません。
3. 関係機関との調整
飛行前には第三者コントロールを前提として必要に応じて撮影場所の管理者(公園、施設、河川など)の許可が必要になります。
また警察、近隣施設などとの調整が必要になります。
30秒の飛行に事前調整で数日~数か月かかることも珍しくありません。
ドローン撮影の料金は「飛行時間」ではない
例えば、
山奥の空き地と都心で飛ばすでは飛行時間は同じでも必要な技術は全く異なります。
そのためドローン撮影の費用は飛行時間ではなく、専門知識・操縦技術・安全管理・第三者コントロール・関係機関との調整・そして「飛ばさない判断」を含めた総合的な業務の対価となっています。
だからこそ、「10分しか飛ばないから安くできる」とは必ずしもならず都市部や人や物の多い場所ほど費用が高くなる傾向があります。
なので撮影内容によって費用はかなり変わるのが通常です。
なぜ「今日飛んで」が難しいのか
ドローン撮影はカメラを持って現場に行けば撮れるというものではありません。
飛行前には、法律、安全管理、管理者との調整など、多くの確認が必要になります。
そのため「今日飛んで」「明日撮って」という依頼には対応できない場合があります。
1. 航空法の確認
まずその場所がDID地区、空港周辺、イベント上空、小型無人機等飛行禁止法などに該当しないか確認する必要があります。
さらに撮りたい内容によって夜間飛行、150m以上が必要になるかも検討します。
「飛ばせるか」ではなく「どのような条件で飛ばすことになるか」を確認する作業です。
2. 管理者の許可
航空法上飛行可能でもその場所の管理者が禁止していれば飛べません。
例えば公園や河川敷は国、都道府県、市区町村などの管理者がいます。
つまり「航空法上OK」=「飛行可能」ではありません。
それ以外の条例や施設の考え方も調べる必要があります。
3. 道路の問題
撮影内容によっては道路管理者、警察署との調整が必要になる場合があります。
また、歩行者や車両などの第三者管理も必要になります。
4. 天候
ドローンは天候に大きく左右されます。
風速、風向、雨、気温、日没時間など
前日まで飛行可能でも当日の天候によって中止になることもあります。
飛行内容、場所の確認→航空法確認→管理者確認→警察や関係機関との調整→天候、人員、第三者管理→安全確認ようやく飛行となります。
だからこそ「今日飛んで」という依頼はしばしば最も難しい依頼になるのです。
「条件がそろってないので飛ばしません」という判断もプロとして重要な仕事の一つと考えます。
よくある勘違い
① 「許可を持っている=どこでも飛ばせる」
許可はありますが、安全を確保できるかは別問題です。
許可とは万能チケットではありません。
② 「公園なら飛ばせる」
公園管理者の許可と第三者管理が必要です。
むしろ都市公園は難易度の高い現場です。
③「海外のPVみたいに撮りたい」
日本では第三者上空飛行は現実的に困難です。
海外映像と日本の運用環境は同じではありません。
④「飛ばせないのは技術不足」
飛ばさない判断も技術です。
無理な飛行を断ることはプロとして重要な仕事です。

